『芭蕉の風景』(下) 小澤實p334『ひととき』 ウェッジ2014/7『新芭蕉俳句大成』明治書院p181
昨今の美食の時代に「瓜」という果実はいかほどの食感を読者に与えるか、さらに「かぶりついたところ」でなく、剥いたところである。いささかとらえどころに甘さを感じる。ついで、結びの下五に「蓮台野l」を持ってきたあたり如何に読むのか大変興味深いところである。
真桑瓜が主題となっているが、現代で言えば西瓜やメロンと言ったところか、そのみずみずしい美味しさは変わらない。名前にファッション性がない分素朴に俳材として映えるではないか。次に、「蓮台野」が「真桑瓜」の「俳枕」 と言えるかについては、あの辺りに広がる当時の野、畑を思うとそういう風であったろうと想像する。東の鳥辺野、西の化野、そして北の蓮台野と葬送の地にあって正気に満ちた真桑瓜を食する瞬間を思う時蓮台野はまさに無常の風吹く洛北の聖地と思う。