山は猫ねぶりていくや雪のひま  芭蕉
『芭蕉の風景』(小澤實p24『ひととき』 ウェッジ2014/③『新芭蕉俳句大成』明治書院p1075

掲出句の「猫山」は、会津の磐梯山の西に位置する猫魔ケ岳であると考えられている。句意は猫山の猫が舐めていったのか、ところどころ雪が溶けたところがある。ということである。この句に対して「貞門風の言葉の洒落に過ぎない」(山本健吉:『芭蕉全発句』)という批評、さらには「山全体が猫と化して、自分の身体を舐めているというイメージは、大胆で、自由であり、斬新である。アニメーションのような幻想を見せてくれているとも言える。(小澤實:本書)。この辺りがこの句の読みのわかれるところであろう。

わたしは、ここでの評価を断ずることは避けるが、この辺りの芭蕉の詠み方として実際に現地を訪れて詠んだのではなく想像によって詠んでいることに、この作品が芭蕉の作句における転換点に立った作品であることを肝に銘じたい。

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