石の上に秋の鬼ゐて火を焚けり 富澤赤黄男

この句はいわゆる想像句である。「秋の鬼」と言うが、春夏秋冬に鬼がいるとでも言いたいのであろうか。そう、言いたいのだ。時は昭和16年の太平洋戦争さなかの句であるそうな。きっと、年がら年中鬼がいて戦火という火を焚いていたに違いない。今もこの鬼は僕たちの庭で火を焚き続けている。

 昭和の時代に書かれたこの句は、偶然か必然かこの令和の時代における鬼さえも書き尽くしている。句の時間を超える普遍性、「名句の所以」である。