Ryo Daimonji Blog 『名句の所以』(著:小澤實p201 毎日新聞出版)

蟋蟀が深き地中を覗き込む  山口誓子 

 若い頃より読み慣れた大好きな誓子のこの句、客観視できないほどだ。まずは、分類は「虫」で秋。技術的には「擬人化」。いかにも蟋蟀が意思を持ち地中を覗き込んでいるような「感じ」を普遍的に捉えている。一般的俳句の教科書では比喩は避ける方が賢明とされる。月並み化して陳腐になる場合が多いからだ。それに比してこの句、ユニークな発想、蟋蟀の顔が浮かぶ写生力等々、名句の所以である。