Ryo Daimonji Blog 


天空は生者に深し青鷹  宇多喜代子


 この天空は単に高い空のことを言っているのではなく、冥界につらなる空を越える空域を言っているのだと思う。従って、我々生とし生ける物にとって高いのではなく深いのである。問題は「青鷹(もろがえり)」である。この句では青鷹と表記しもろがえりとルビするのであるが、文字通り羽毛が青色を帯びている鷹(大辞泉)のことを言って季語止めとしているわけではないと解する。澄み切った冬の青い空に鷹が飛ぶ。その青こそこの句の命、鷹はその生命力を足しているに過ぎない。ならばこそこの句、「蒼鷹」でなく「青鷹」なのである。それにしても宇多先生、男性的な大きな句を描かれたものである。