すゞみのいひやう少し心得て仕たり
川かぜや薄がききたる夕すずみ 芭蕉
『芭蕉の風景』(下) 小澤實p192『ひととき』 ウェッジ2011/8『新芭蕉俳句大成』明治書院p281
2011年「ひととき 8月号」は創刊10周年を記念して「涼と出会う京の夏」と銘打つ特集号であります。連載「芭蕉の風景」でも小澤實先生が、江戸時代に芭蕉が捉えた京の「涼」を特別編として寄稿しておられます。
掲出句は元禄三年(1690年)6月頃、京の四条河原で夕涼みを楽しんだ際の句、とあります。八月一八日凡兆に出した書簡には、掲出句とともに「あなたの家で、できかかった句ですが、結局完成できず捨てたものを、また取り出してみました」。二ヶ月ほど経った後、芭蕉は掲出句を見直して、その句が「すずみ」の実感を備えているのに改めて気づいたのでした 。
この気付きの前に「川かぜや」の上五を「良し」とするか、はたまた中七の「薄がき」は芭蕉自称と解するか、芭蕉以外の他称と解するか評に分かれがあります。私は「川かぜ」に異論なく。「薄がき」は自称と読ませていただきます。