2022年11月
Ryo Daimonji Blog
冬ぬくしバターは紙に包まれて 中村安伸
暖冬とはいえセーターコートとついつい着込んでしまう。冷蔵庫の冷え切ったバターは紙に包まれている。出がけ前の朝食の一瞬、バターに目が入った。
食べ物俳句は写生句の基本だと思う。リアルに美味そうに書くにはそれなりの目が必要である。この句そういった気負いも何もない平凡な写生である。凡なるもののうちにある俳味、名句の所以である。
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狂句木枯の身は竹斎に似たる哉
なるほど、「狂句」を外せば有季定型句になる。が、僕にとってこの句の難は「竹斎」であった、意味がわからなかったのである。竹斎は医者で、よくある店のコピーの「日本一まずい店」とかある、あれであるつまり世界一の藪医者と豪語する医者。商人の物狂い芸のように狂句を売り歩く私。今にすれば下手な謙遜であるが、俳壇に新風をと意気込む芭蕉翁の狂句木枯の洒落であった。
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冬麗の微塵となりて去らんとす 相馬遷子
うららかな冬の日に芥子粒のような塵となって、私はこの世を去ろうとしている、と辞世句を残したと解した。66歳の他界であった。武士を思わす潔い覚悟の言葉である。
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