2023年03月

24 定本 高浜虚子全集 第一巻『五百句』より

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草を摘む子の野を渡る巨人かな  虚子
 

 この句、中七で「の」で繋ぐ、しかも下五をかなで止めさらに上五まで詠嘆を循環させるところが、難しい。この草摘む子の野に出て草摘む時に不意に忍び寄る怖さ、獣の気配か、まさかダイダラボッチの気配を詠んだのか想像は膨らむのだが。



60『名句の所以』(著:小澤實)を読む

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 大風やはうれん草が落ちてゐる  千葉皓史
 

 この句、作者の視線は落ちているほうれん草に釘付けである。してみると野菜が落ちているのが珍しい所であるようだ。唐突にほうれん草に出会い、作者は春を知ることになった。春一番かあるいは春二番と呼ばれる大風も吹いている。


92『芭蕉の風景』(著:小澤實)を読む

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桜より松はニ木を三月越シ  芭蕉
 

 この句は『芭蕉の風景』の句意を引用して読むことにする。

上五の「桜より」桜のころより、中七「松は二木を」見たいと待ち望んできた武隈の松は、みごとに二つに幹が分かれた松でした。下五「三月越し」この松を観たいという、三月越しの思いはようやくかなえられました。

元禄ニ(1689)年旧暦五月四日『おくの細道』掲載。





23 定本 高浜虚子全集 第一巻『五百句』より

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草摘に出し萬葉の男かな  虚子


 虚子も、萬葉集最初の巻頭歌作者雄略天皇のように蓬や芹、嫁菜などを摘むいわゆる草摘に出たいと、そして野に菜を摘む娘に求婚するこの高貴な男にあやかりたいものだと春を詠嘆しているのではないだろうか。






59『名句の所以』(著:小澤實)を読む

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我山に我れ木の実植う他を知らず  西山泊雲
 

 歳時記によると、春先に様々な木の実を苗床や山に直植えすることを「植う」と言うとある。この句、そのことに集中していることだけを特筆して下五で「他を知らず」と止め切りする。日常の業として為す山仕事なのだが孤高を行く魂の如きを作者は凝視している



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