2023年09月

110 『名句の所以』(著:小澤實)から

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未来より滝を吹き割る風来たる  夏石番矢
 

 風に吹き割れる滝といえばさほど大きくなく細い目の滝で、その風は突風であろうと思う。しかし、この句は上五で未来より来た風と断定している。割られる滝と未来より来た風が強烈な暗喩となっているものと思う。



40 芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

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芭蕉野分して盥に雨を聞夜哉   芭蕉
 

 芭蕉葉が強い風に吹きさらされる音や、雨漏りを受ける盥の音を今宵聴く夜であるなあ。上五の芭蕉葉に自分と、自分の心細さを込めているように読める。杜甫、蘇東坡の詩文を踏む、とあるがわたしは知らない。




72 定本 高浜虚子全集 第一巻『五百句』より

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遅月の上りて暇申しけり   虚子
 

 誰しもついつい長居をしてしまうことってあるではないか、その申し訳のなさを遅月に託して暇乞いをする。

そういう友とはいつまでもいたいもんだ。



109 『名句の所以』(著:小澤實)から

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鉄斎の老い黒き滝赤き滝  竹中 宏
 

 富岡鉄斎という名はどこかで聞き知っていた、が定かにではなかった。文人画家と紹介があったが確たる作品に記憶がなかった。本来清透な滝を黒く、あるいは赤く描いたのであろうか。晩年の自由自在な境地。かくありたい。


39 芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

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  侘テすめ月侘斎がなら茶歌   芭蕉
 

 「月をわび、身をわび、拙きをわびて」すめ(住め、澄め)は掛詞。月侘斎は月を友とする風狂人を意味し芭蕉自身をさす。「なら茶」は米を薄めの茶と塩などで炊いた奈良茶飯のこと。「歌」はそれに因む歌で、このように簡素な侘暮らし、すなわち目指すべき美的境地を讃えているのだ。




ギャラリー
  • 2012年(平成24年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
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  • 2011年(平成22年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2011年(平成22年) 冬 大文字良第一句集『乾杯』より
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  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
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