2024年02月

96 定本 高浜虚子全集 第一巻『五百句』より

Ryo Daimonji Blog

道のべに阿波の遍路の墓あはれ  虚子

 弘法大師さまの御跡である八十八ヶ所霊場を巡礼することが遍路だと言われています。今でも多くの人たちがお参りしておられます。人生のお礼に参られる人、今まさに人生に願をかけお参りする人もあるのでしょう。第一番札所の徳島の霊山寺から香川の第八十八番札所、大窪寺で結願するまでの1200キロを歩く行となるようです。従って当然に脱落する人もいただろうし、最悪死に至った人もいただろうことは想像に難くないです。そんなお遍路さんの墓が、それも道の淵にあるという、これはまさにあはれというほかありません。




132 『名句の所以』(著:小澤實)から

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恋猫や鮑の貝の片思ひ  内藤鳴雪

 内藤鳴雪は、幕末の伊予松山藩の武士、明治期の官吏、明治・大正期の俳人とある。「鮑の貝の片思い」は万葉集にも見られる古い成句である。故に鳴雪が俳句に引用したことは成句の引用ということだけをもってする批判はあたらない。恋猫に成句を重ねその切なさを例えたユーモアが名句として今に伝わるのである。

 


65 芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

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我ためか靏はみのこす芹の飯  芭蕉


 この句は、山店子なる人がわざわざ芹飯を持つてきてくれたことへの謝意を句にしたものであった。その芹を鶴が食べ残したものと鶴を配することによって高尚な趣で謝意を表そうとしている。前書きの「金泥坊底の芹」は杜甫の詩の一節を踏まえ芹の侘を込めているのだ(明治書院 新芭蕉大成1152)










95 定本 高浜虚子全集 第一巻『五百句』より

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船の出るまで花隈の朧月  虚子

 花隈は、神戸市中央区の、花隈城のあった辺りで神戸港の発展に伴い高級料亭が立ち並ぶ商業地域。昭和十年四月二十四日、播水 (五十嵐)の招きによる宴席で詠まれたものであるようだ。私は花隈町なるところに土地勘はまったくないのだが、瀬戸内海に面しており港町神戸の雰囲気がいかんなく伝わる句で季語朧月も味わい深い。


131 『名句の所以』(著:小澤實)から

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恋猫に颯とたてがみのやうなもの  いのうえかつこ

 恋猫に颯爽とした馬の立髪のような毛が生えているという。猫にさかりがつくと、どの猫でもそうなるのであろうか。いやそうではあるまい作者の猫がそう見えるのである。恋をする私の猫はかっこいい雄猫なのよ、と自慢しているのである、と解した。



 


ギャラリー
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