2024年03月

138 『名句の所以』(著:小澤實)から

Ryo Daimonji Blog

梅咲いて庭中に青鮫が来ている  金子兜太

 庭に梅が咲き春の訪れに満ちている。その庭にあの凶暴な青鮫が来ているという。これはどういうことで、どこからこんな発想が生まれるのか、つまり何を言いたいのか、とか真面目な人ほどあれやこれや考えてしまう。

この感覚の跳び方が金子兜太さんの俳句なんですよ、とでも言うほかない。梅の庭が青く獰猛な海になってしまう。意外にも美しいではないか。


 


 



71 芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

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水とりや氷の僧の沓の音  芭蕉

 お水取りとは、東大寺の二月堂で行われる修二会のことであるが、3月12日の「後夜」の中で6人の練行衆が閼伽井屋に向かって香水(二月堂の下の岩から湧き出る神聖なる清水)をくみ、これを須弥壇下の香水壺に蓄えて本尊にお供えする作法であるそうな(ネット情報)。

 この6人の練行衆を「氷の僧」と言い、その時刻の寒さの中で氷のように冷え切ることだけでなく、荘厳な様子を表している。その慌ただしい作法が沓の音にもよく現れている。



101 定本 高浜虚子全集 第一巻『五百句』より

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燕のしば鳴き飛ぶや大堰川  虚子

 はて、燕って飛びながら鳴いてんだっけ。

たしかに目の前を反転しながら鳴いていたと思う。大堰川は、嵐山に保津川から桂川になるまでをそう言うんだと思う。ともあれ妻の里を流れる大きな川で桜どき、夏の花火で賑わう美しい川だ。嵐山でデートするとわかれるっていうらしいけど、僕達は幸せだよ。



137 『名句の所以』(著:小澤實)から

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星の香の少しく混り蕗の薹  渡邊千枝子

  蕗の薹に星の香がすると言う。どこのなんという星かなどは愚問である。ともかくも遠くはるかな香であり味である。当然、具体的になんとも言えないところを「すこしく」とおさえて表現している。辞書に副詞。参考、形容詞に類推した語形とあった。

 


70 芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

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世にゝほへ梅花一枝のみそさゞい  芭蕉

 どうやら、一枝は玄髄という医者の号のことで、この人はみそさざいが梅のひと枝に満足しているように、分相応の暮らしを営む徳人であるようだ。そういった玄随の徳が梅の香りのようにひろまれよ、と挨拶しているのだという『荘子』逍遥遊篇。




ギャラリー
  • 2012年(平成24年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
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  • 2012年(平成24年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2011年(平成22年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2011年(平成22年) 冬 大文字良第一句集『乾杯』より
  • 2010年(平成22年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より