2024年05月

155 『名句の所以』(著:小澤實)から

Ryo Daimonji


葉桜の中の無数の空騒ぐ  篠原 梵


 葉桜の葉の間に見える空を無数の空と表現した。葉桜の量感を小さい隙間にの空に託したわけだ。その上に騒ぐ葉桜を空が騒ぐと転化して見せたところ、こういう表現は明喩と言っていいのか。無数の空が騒いで「いるようだ」ととらえ表現したところが名句の所以なのだと考える。


88 芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

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おもひ立木曽や四月のさくら狩  芭蕉


 貞享ニ(1685)年四月、『野ざらし紀行』の旅をおえ、尾張から木曽路を経て江戸に帰る際、熱田で巻いた連句の立句「明治書院『新芭蕉俳句大成』」。

 江戸へ帰る途中であるが、折しも少し遅いが木曽の春も遅いので四月の桜狩を楽しもうかと思い立ったことだよ。

 遅い木曽の春を思い返し木曽での四月の桜狩を思い立ち、わくわくしている心持ちがよく伝わる。


118 定本 高浜虚子全集 第一巻『五百句』より

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家二軒笠取山の時鳥  芭蕉



 笠取山(かさとりやま)は、埼玉県秩父市山梨県甲州市の境、奥秩父山塊の主脈に位置する標高1,953 m秩父多摩甲斐国立公園に含まれる(ウキペディア)。ネットで見る限り周辺に人家があるような気配はない。山裾へ降りていけば二軒ほどはあるのかもしれない。そういう過疎地ではあるが国立公園級の山に鳴く時鳥の声が格別であったに違いない。明治27年6/24「小日本」とある。




154 『名句の所以』(著:小澤實)から

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葉ざくらや人に知られぬ昼あそび  永井荷風


 いきなりこの句、淫靡な気配を放つ。永井荷風をネットで見てみたが窮乏したり、病気になったりもしておられるが、基本裕福な育ちの人らしい。後年文化勲章も受賞してをられる。若い頃の遊興三昧も芸の肥やしとなったようである。


87 芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

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白げしにはねもぐ蝶の形見哉  芭蕉


 この句は隠喩を用いた句である。即ち白げしが杜国、はねもぐ蝶が芭蕉を意味している。その前提として空米取引で罪を問われている杜国との会うに会えない不遇への哀感があると思われる。白げしに潜っていた蝶が飛ぶ時に残した羽のように私の句をあなたに残して行くことだ、ほどの意味に解した。

 


ギャラリー
  • 2012年(平成24年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
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  • 2012年(平成24年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2011年(平成22年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2011年(平成22年) 冬 大文字良第一句集『乾杯』より
  • 2010年(平成22年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より