2024年06月

126 定本 高浜虚子全集 第一巻『五百句』より

   Ryo Daimonji Blog

短夜の星が飛ぶなり顔の上  虚子

 この句を読んで、流れ星が作者にとても近くに感じられた。それもそのはず、前書に野宿とある。夏の短い夜を野宿しているのである。野宿という非日常に夜空も流星も身近に生き生きと迫ってくるのだ。〈短夜の山の低さや枕許〉の句も一読意味がわからなかったのだが、同じく野宿での句なのだとわかった次第である。


 


163 『名句の所以』(著:小澤實)から

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亀の子のすつかり浮いてから泳ぐ  高田正子

 いわゆる銭亀といった小さな亀は重量がなくその浮力だけで十分に浮くのである。そしてともかく手足を動かすのでそれが泳いでいるように見える。この句、すつかり浮いてからとそのさまを切り取るが、どの銭亀も沈んでいるわけではなくそういうふうに可愛く泳ぐのである。それを浮いてから動くと表現した作者が上手いのである。




96 芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

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髪はえて容顔蒼し五月雨  芭蕉 

 貞享四年(1867)『続虚栗』。五月雨つづきのこのごろ、髪もはえ、顔も青白く精彩を欠いている。貞享四年と言えば芭蕉、数え44歳とある。身を構わぬこともあろうがこのような自分を俳句にすることも珍しく興味深いことである。





 



125 定本 高浜虚子全集 第一巻『五百句』より

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ほとゝぎす月上弦の美濃路行く  虚子

 美濃の街道を行く頃には空には上弦の月がかかってをり、ほととぎすの声が聞こえた。さて、この場合のほとゝぎす、月上弦の二重季語はどう解すべきか、私はこの句の主季語を上弦の月と解し、ほとゝぎすを従たる季語と解します。美濃路を行く空の上弦の月をこそ主題として詠んだものであり、ほとゝぎすは別の景を取り合わせとして置いたものと解するからです。

 





162 『名句の所以』(著:小澤實)から

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黴の書に占魚不換酒の印存す  上村占魚

 解説を読むと(小澤實著『名句の所以』)すぐにああそうかと合点がいく。最初「占魚不換酒」がわからなかった、なあんだ本を売って酒代に換えないこと、その決意表明の印が古くなった自書にあるってことだ。

 今日ブックオフにそこそこの本を持ち込んだところで夕どきの酒代にもならんのであるがこの頃はなったのであろうか、このように刻印したところで換金の減点材料にしかなるまいに、なんとも酒好きの俳人のいとほしいことよ。





ギャラリー
  • 2012年(平成24年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
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  • 2011年(平成22年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2011年(平成22年) 冬 大文字良第一句集『乾杯』より
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  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
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