2024年07月

133 定本 高浜虚子全集 第一巻『五百句』より

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海を見つ松の落葉の欄に倚る  虚子

 橋を渡りながら海を見ている。その欄干に倚っているのだが足元には松の落葉があった。そしてそれを、子規と共に見ているのだ。前書き「子規と共須磨保養院に在り」とある。


171 『名句の所以』(著:小澤實)から

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起立礼着席青葉風過ぎた  神野紗希


 教室であろう、生徒が先生になす授業前のルーティンと読んだ。その瞬間に初々しい新緑を風が吹き抜けた。若さとはそんな風の一瞬なのかもしれない。この句、歴史的仮名遣いではなく現代語で括っている。そこにこの句の名句性があるのだが。




104 芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

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蕣は下手のかくさへ哀れ也  芭蕉

 蕣(あさがお)は下手な人が描く絵でさへしみじみとした風情があります。嵐雪の絵心への褒美句とある(小学館『芭蕉全句』)。ところで、あさがおは貞享四年(1686)にもあって蕣と書いたのか。植物にも漢字にも歴史があって、そういうことも知りたい。学びはキリもなく人生の短さを特に感じるこの頃である。




170 『名句の所以』(著:小澤實)から

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夢の如くがゞんぼ来たり膝がしら  岡本松濱      


 がゞんぼと言う虫の儚さはよく知っているつもりだ。さすわけでも毒があるわけでもなく、なんとなく藪蚊を大きくしたような形状がうっとおしくある。ただ、この句の上五「夢の如く」の比喩が私にはわからなかった。ががんぼは儚くあるがしっかりと存在してをり、その無害性に思わず敵意が萎えるのであった。



103 芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

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いなづまを手にとる闇の紙燭哉  芭蕉

 蝋燭の灯を手で包みかこうような紙燭を、闇に閃くいなづまを手にかこうイメージに重ねてその瞬間を捉えている。いなづまの閃光はあやしくも美しい。科学的説明もない当時に俳句で捉えることは難しかったことと想像する。貞享四年(1687)続虚栗とある。


 


ギャラリー
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