2024年08月

177 『名句の所以』(著:小澤實)から

 Ryo Daimonji Blog

巣を歩く蜂のあしおと秋の昼  宇佐美魚目

 この句の蜂はカネバチ、スズメバチだろうと思う。大きな巣になるのでたいがい駆除されることが多い。数匹が、あるいはうじゃうじゃと巣を歩く景はすぐに目に浮かぶ。しかし足音となると聞いた気もするがそれは羽音で足音と言うほど明確なものではない気がする。そこを明確に句にされた魚目氏の手柄と言えると思う。


110 芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

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よき家や雀よろこぶ背戸の粟  芭蕉

 まことに良い家だ。家の裏には豊かに粟(あわ)が実り、雀たちも喜びついばんでいる。新宅を祝う挨拶句である。(明治書院 新芭蕉俳句大成)

下五「背戸の秋」との説もあるようですが「背戸の粟」が具体的でいいように思われます。




138 定本 高浜虚子全集 第一巻『五百句』より

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経箱の底に蟲なく清涼寺  虚子

 元句には經箱とあったが経箱で、お経を入れておく箱のことだそうな。その経箱の底に蟲が鳴くとは、俳人への思はぬサービスで虚子さんがこれを見逃がすはずがない。清涼寺は嵯峨にある立派なお寺でまだ行ったことがない。おそらく観光客でごったがえしているのではないだろうか。


176 『名句の所以』(著:小澤實)から

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石の上に秋の鬼ゐて火を焚けり  富澤赤黄男

上五中七、「石の上に秋の鬼ゐて」作者の生活圏の石なのか全く観念上の石なのか、何故秋の鬼なのか冬や夏ではいけないのか。そしてその鬼は火をたいた。この石は日本国を意味し、秋の鬼はやがて来る太平洋戦争に向かって戦略を練る軍人、政治家たちをイメージしているのではないか。この年の12月8日、日本軍がハワイ真珠湾攻撃、米英に宣戦布告、太平洋戦争が始まる。  

109 芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

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何事の見たてにも似ず三かの月  芭蕉

 確かに三日月は、詩歌連俳にて舟・黛・弓など多くのものに喩えられてきた。しかし、どんなものよりも実際の三日月は美しい。(小学館 芭蕉全句)

この句の下五の季語「三かの月」早速歳時記で確認するのだが、この言い方は滅多にない使いようでこの句をいっそう深く彩っている。


ギャラリー
  • 2012年(平成24年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2012年(平成24年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2012年(平成24年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2011年(平成22年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2011年(平成22年) 冬 大文字良第一句集『乾杯』より
  • 2010年(平成22年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より