2024年09月

184『名句の所以』(著:小澤實)から

Ryo Daimonji Blog

爽やかやからだにかすかなる浮力  日下野由季

 俳句は何を詠んだかがまず問われる。この句は人間の体にある浮力について詠んでいる。辞書に流体内にある物体の各表面に働く圧力の差によって、物体が重力に反して鉛直上方に押し上げられる力を言うとあるが、ともかく流体内にあって浮き上がる力と思う。それならば私も海や川、プールなどで何度も経験している。俳句は次にどう詠んだかと聞かれる。この句、上五を爽やかやとや切れにして、かすかなる浮力で結んでいる。つまり歴史的仮名遣いで物理的な浮力という現象を詠んでみせているのだ。その普遍性を意外性と斬新性が俳句価値を獲得したのだ。


117  芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

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おくられつおくりつはては木曽の秋  芭蕉

 友との別れの名残惜しさは格別だが、子供の頃とは異なり大人ともなれば節度ということがある。子供のように大好きな人との別れに駄々をこねて泣くというわけにもいかない。しかし思いは大も小も同じ、その果てには一面に木曽の秋が広がるのである。


145 定本 高浜虚子全集 第一巻『五百句』より

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一つ引けば田の面の鳴子なるを見よ  虚子

 田の面に害鳥避けに鳴子が渡してある。うまくできていて一箇所を引くと田一面の鳴子が鳴るのだ。その様子を見よ、と言う。聞けではなく、見よと言う。それは鳴子が踊るように動き鳴る。その様子は見て聞く方がおもしろさがよくわかると言いたいのである。



183『名句の所以』(著:小澤實)から

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木犀にとほき潮のみちにけり  石橋秀野

 木犀といっても種類にいろいろあるようだ。僕の近所にもあって、金木犀だ。盛りになると遠くまで香りを飛ばし秋を感じさせるのだが、この木に遠くの海や潮がみちた、とはどういうことだろう。その連想に僕は共感できずにいる。



116 芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

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見送りのうしろや寂し秋の風  芭蕉

 飛行機、電車、船。さていづれの別れが一番寂しくあるだろう。そりゃあ徒歩ですよねえ。でも、別れなんぞはサッパリじゃあねで済ましたい。うしろ姿に手を振り続ける、秋の野、村外れまで、隣村までと名残り尽きないわかれ。ほんとはそんな人との関わりが大事なんです。



ギャラリー
  • 2012年(平成24年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2012年(平成24年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2012年(平成24年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2011年(平成22年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2011年(平成22年) 冬 大文字良第一句集『乾杯』より
  • 2010年(平成22年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
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