Ryo Daimonji Blog
爽やかやからだにかすかなる浮力 日下野由季
俳句は何を詠んだかがまず問われる。この句は人間の体にある浮力について詠んでいる。辞書に流体内にある物体の各表面に働く圧力の差によって、物体が重力に反して鉛直上方に押し上げられる力を言うとあるが、ともかく流体内にあって浮き上がる力と思う。それならば私も海や川、プールなどで何度も経験している。俳句は次にどう詠んだかと聞かれる。この句、上五を爽やかやとや切れにして、かすかなる浮力で結んでいる。つまり歴史的仮名遣いで物理的な浮力という現象を詠んでみせているのだ。その普遍性を意外性と斬新性が俳句価値を獲得したのだ。