2024年11月

140 芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

Ryo Daimonji Blog

米買に雪の袋や投頭巾  芭蕉
           なげずきん

 投頭巾は、江戸の飴売りなどが頭に着けた帽子。米を買いに行こうとしたらあいにく雪が降ってきた、米袋を被って行(雪)こうとしゃれたのであるが、それが投頭巾を被っているようでもありおかしいのである。

 「貧」を主題とした深川の八貧の句会で、(八貧とは、依水<いすい>、苔水<たいすい>、泥芹<でいきん>、路通<ろつう>、曾良<そら>、友五<ゆうご>、夕菊<ゆうぎく>、加えて芭蕉である。)皆がそれぞれ眞木買い、水汲み、めしたき、酒買い、炭買い、茶買い、豆腐買いなどをするという設定で句を詠んだ。芭蕉は米買いが当ってこの句を詠んだのである(山梨県立大学のネット情報抄出)。


167 定本 高浜虚子全集 第一巻『五百句』より

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隣から寒夜とひ来る裏戸かな  虚子

 特段の用事があるわけではない。裏口から隣人が、「寒いねぇ」とか言ってのぞき来る。本当に来たかどうかは疑わしいのだが、虚子さんの人恋しさはこういう作品にさりげなく出る。おそらくそんな気安い近所づきあいの呼吸が虚子さんは好きなのだが、なかなかそういうわけにはいかない。



205 『名句の所以』(著:小澤實)から

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冬ぬくしバターは紙に包まれて  中村安伸

 バターは洋食和食を問わず調理食材として使われる。同様にマーガリンも使い勝手が良くどこの家庭にも冷蔵庫を開けるとあるのではないだろうか。そういう一般的な食材をそのまんま俳句にしたものである。固形性が強いので逆に冬ぬくしなる季語で溶かそうとしているかのようである。あくまで私見であるが《冬ぬくしバターを包む銀の紙》と銀紙を強調してよんでみたい。その方がバターの存在が浮きあがると思うのだが。




139 芭蕉を読む(芭蕉全句:小学館)

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二人見し雪は今年も降りけるか  芭蕉

 いつか二人で見た雪は今年も降っただろうか。降りけるは過去詠嘆の助動詞「けり」、「か」は係助詞「か」で疑問。この二人、なんやかや聞くと何やら怪しく聞こえる。前書に「次のとしならん、越人が方へつかはすとて」とある(笈日記)。



166 定本 高浜虚子全集 第一巻『五百句』より

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繕うて古き紙衣を愛すかな  虚子

 紙衣(かみこ)は、和紙を糊でつなぎ、柿渋を塗り、天日で乾した後、揉んで柔らかくして衣服に仕立てたもので、冬の季語とある(角川俳句大歳時記)。この句が明治30年12月3日とあるので、ずいぶん昔からあったもののようである。

それを古くなっているのだが、好んで繕うて着ることを句に詠んでいるわけだ。ネットで見ると確かに俳人向きで現代にも合いそうに見える。


ギャラリー
  • 2012年(平成24年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2012年(平成24年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2012年(平成24年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2011年(平成22年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2011年(平成22年) 冬 大文字良第一句集『乾杯』より
  • 2010年(平成22年)  冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より
  • 2021年(平成23年) 冬 大文字良 第一句集『乾杯』より