2025年12月

Kハイク 265

2025俳句甲子園 (書肆アルス)

第3会場

天牛や覆面脱ぎて父の貌  (鶯谷高等学校)

○悪役や天牛虫の面がまえ  (北海道旭川西高等学校)

(○印は3句戦の結果でこの2句の優劣ではない。)

  この二句はどちらも「顔」をテーマに絞ることになった。鶯谷校は、プロレスラーであろうか、何某かの覆面男の覆面をとった顔が父の顔であった、とその意外性を天牛の顔と取り合わせてみ見せる。一方北海道旭川西校は悪役のかおと天牛虫の顔を面がまえという言葉で共通する悪顔を見せる。

  いずれも天牛から見せる顔が、俳諧から遠い。はやりの言い方で面白すぎとでも言おうか。




Kハイク 264

2025俳句甲子園 (書肆アルス)

第3会場

心太写楽の役者飛び出さう   (鶯谷高等学校)

○柱よく見ゆる家なり心太      (開成高等学校B)

(○印は3句戦の結果でこの2句の優劣ではない。)


  心太は一説には遣唐使によってもたらされたと言うのもあるようだが、写楽の江戸時代となると庶民の間食として好まれてもいたようです。心太と写楽、時代背景を重ねると、実に生き生きと感じられる。いっそ、写楽の役者「飛び出たる」とやっちまうのもありではないか。

  開成は、家と心太を二物でとりあわせた。すっきりとその家中がみえ、柱が黒々としている。こう言う即物的な句が、私は好みである。


Kハイク 263

2025俳句甲子園 (書肆アルス)

第3会場

三連休果つ流し込む心太 (星野高等学校B)

○初恋は玉砕すべし心太 (北海道旭川西高等学校)

(○印は3句戦の結果でこの2句の優劣ではない。)


 いつの三連休なのかにわかには分からないのだけれど、三連休は楽しみで特別感がある。が、始まるとあっという間にこれと言ったこともなく過ぎ去ってしまうのもそれである。それは、まるで流し込み食べる心太のようなものである。

  初恋が全て玉砕に終わるとは限らないが、結婚という形に成功することはなかなかに難しい。今時初恋で結婚まで意識することも少ないのかもしれないが、玉砕するのが普通だぐらいに当たっていくべきなのだと北海道旭川西校の諸君はやや古風に初恋を詠むのである。



Kハイク 262

2025俳句甲子園 (書肆アルス)

第3会場

○青田より青田へ風と夜明けかな  (北海道旭川西高等学校)

青田道弟のすぐついてくる  (開成高等学校B)

(○印は3句戦の結果でこの2句の優劣ではない。)


  北海道旭川西は、上五中七で青田風のことを詠んで、それと夜明けを一物的に捉えてその景を夜明けの風情として詠嘆してみせている。開成校Bは、青田道をついてくる弟のことを詠んで、いつもついてくるでなく、「すぐ」とすることで、可愛く思う弟への兄弟の距離を詠んでいる。いずれの句も反射的に若い感受性が浮かびでて爽やかである。




Kハイク 261

2025俳句甲子園 (書肆アルス)

第3会場 

丸刈りがみんな寝てゐる青田風  (星野高等学校B)

○青田風蔵に褪せたる出征旗  (鶯谷高等学校)

(○印は3句戦の結果でこの2句の優劣ではない。)

  兼題の「青田風」はまだ穂が出ない状態の田んぼを言うと歳時記にあった。その田んぼや一面に吹く風を青田風とするのであった。その青田風に星野校は睡眠中の丸刈り頭を、鶯谷校は蔵とそこにある出征旗をとりあわせた。青田風の吹き方に、あるいは背景に人間やその存在感を感じたものであろうと思う。

  私は、星野校の丸刈りに噴き出しながら友を見る暖かさを感じた。


ギャラリー
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