Ryo Daimonji Blog

暁や盥の中の秋の水   虚子

 この句、盥の中の水に秋という季節を特に感じている。しかも宵、夜中に続く未明の刻、つまり暁どきをや切れで詠嘆して見せるに及んでなんとも不可解な俳句となっている。比較的大きな盥に汲み置かれた水は何のための水であったのだろう。ましてや夜明け前の未明の刻である。

 たまたま寝る前に汲み置かれた盥の水を明け方に見る。その水に涼しくなった秋をつくづく感じた。俳人虚子の非凡な感性が捉えた秋の夜明け前の朝の一瞬。そう解することにする。