Ryo Daimonji Blog 『名句の所以』(著:小澤實p198 毎日新聞出版)より
ひるすぎの小屋を壊せばみなすすき 安井浩司
鍬や耕運機など農機具をしまっておく小屋かそれともちょっと立ち寄るためのものか、ともかく簡易な小屋であろう。田んぼというより畠の隅に立っていたもののように思う。その小屋を昼すぎに壊したという。午前中からの大仕事でなく昼からの片手間にたる仕事となれば小さな古びた小屋と思う。そんな小屋を壊すとそれでも広々とすっきりするものである。でも、作者はそのことを言いたいわけではなく、更地に戻った原野に広がるすすきにぽつんとしてしまったのだと思う。このぽつん感がこの句の名句の所以と言えよう。